今年度、優秀教員として表彰された向島先生。この東邦インタビューの取材を申し入れたところ、経歴やご自身がデザインした作品などをまとめたカラフルな「自己紹介スライド」を、すぐに送ってくださいました。単なる履歴書ではないところが、さすがデザイナー! そんな向島先生にお話を伺いました。
――自己紹介スライドを作ってくださったのは、先生が初めてです。経歴には、グラフィックデザイナー、ブランディングデザイナー、Webデザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクターなどとあります。デザインの仕事にも、さまざまな役割があるのでしょうか?
デザイナーは、伝えたいことや目的に合わせて、具体的な形にしていく人ですね。ディレクターは制作全体を指揮し、クライアントとの交渉も担います。私は主にグラフィックデザイナーとして仕事をしてきました。グラフィックデザインは、文字や写真、図形などを組み合わせて、情報やメッセージを視覚的に伝えるものです。私は長く、紙媒体のデザインに携わってきました。ブランディングデザイナーは、ブランドの価値や世界観を視覚化します。Webデザイナーは、見た目だけでなく、Web上での使いやすさや情報の探しやすさも考えてデザインします。Webでは、画面上での操作や表示のされ方も考える必要があり、紙媒体とは異なる工夫が求められます。
――先生はこれまで実務家として歩んでこられましたが、そこから教員の道を選ばれたのですね。実は取材の前に、ある方が「僕が勧めたんだ」とおっしゃっていました。自己紹介スライドにも、その方のゼミで制作された本が紹介されています。
上條憲二先生(経営学部教授)のゼミ生が作った『Z世代にもほどがある?』ですね。表紙のデザインを頼まれました。上條先生との出会いがあって、今の私があります。
子どもがまだ小さかったころ、フリーランスとしてデザインの仕事を再開しました。その数年後、業務委託で関わっていたブランディング会社の勉強会にオンラインで参加したことがあり、その講師が上條先生でした。そこで愛知東邦大学のブランディング事例を見て、とても感動し、「私もこういうブランディングをしてみたい」と思いました。
――大学のブランディングに惹かれたことが、どのように教員への転身につながったのでしょうか?
そんな中、たまたま愛知東邦大学でコミュニケーション・デザイン学科が新設されることになり、デザイン分野の教員を募集していることを知ったんです。教員になるなんて考えたこともなかったので、ずいぶん迷いました。そんな私の背中を押してくださったのが、上條先生でした。たとえ採用に至らなくても、選考を受けること自体が貴重な経験になると思い、応募を決めました。
――プロフィールには、京都芸術大学大学院の修士課程を修了されたとあります。大学院に進学されたのは、本学への採用が決まってからですか?
そうです。教員経験がなかったため、大学院で学ぶことが教員としての自信にもつながると考え、通信制の大学院に進学しました。学科の開設前だったため、採用が決まってすぐに就任したわけではありません。大学院1年目はデザイナーとして働きながら非常勤講師も務め、2年目は専任教員として働きながら修士課程を修了しました。子ども2人がそれぞれ別のスポーツをしていたため、土日は夫婦で手分けして付き添う必要がありました。その上、修士制作や授業資料もたくさん作らなければならず、目が回るほど忙しかったです。
――大変な時期を過ごされたんですね。ここで先ほどの転身の話に戻りますが、先生が教員として所属されたのは、芸術系の学部ではなく経営学部です。その点については、どのように考えていらっしゃいましたか?
最初は、経営学部でデザインをどのように教えていくかを自分なりに模索しました。もともと、私は企画もデザインもできるデザイナーになりたいと考えていました。新卒で入社した会社では、営業・企画からデザインの仕上げまで、一貫して担当していました。そこで実務に携わる中で、自分には企画書を書く力が足りないと気づいたんです。私が学部生だった当時は、通っていた芸術大学に企画系の授業がなく、在学中から「そういう授業があったらいいのに」と考えていました。
だから「経営学部のコミュニケーション・デザイン学科」と聞いたとき、学生時代に学びたかったことと重なると思いました。ビジネスの現場で役立つ力を身につけられる学科だと感じたんです。デザインの力があれば、社内報や企画書も分かりやすく魅力的に作れます。実際、私の授業では、デザイナー、制作を指揮するディレクター、発注者であるクライアントの3つの立場からデザインを考えます。作る力に加えて、目的に合わせて制作全体を見渡す視点も養ってほしいと思っています。そうした力は、就職活動でも強みになると思うんですよ。
――先生の授業は「分かりやすい」というのは、そんな体験を踏まえている点もあるのでしょうね。学生からの高評価が今年度の優秀教員表彰につながりました。以前、名刺を作る授業を拝見したことがありますが、具体的にはどのような授業をされているのでしょうか?
「東邦プロジェクト」の授業では、自分の強みや魅力を表現した名刺を制作しました。「本学のシリーズ広告を作ってみよう」という授業も行っています。本学には3学部あるので、それぞれの特色を生かしたシリーズ広告を作ることができます。グループワークで広告を制作し、互いに競い合うわけです。今は無料で使えるデザインソフトもあり、誰でも気軽にデザインに取り組めます。
――名刺や広告を作る、楽しそうな授業ですね。でも、デザインが苦手な学生もいるのではないですか?
そうですね。「自分にはセンスがないから不安だ」という学生もいます。だから、「これはダメ」と一方的に否定しないようにしています。みんな、それぞれに魅力や強みを持っていますし、面白い発想をする学生もいます。この1年半、授業を通して、私自身も学生一人ひとりの発想の面白さに気づかされました。そうした発想が、人を惹きつけるデザインにつながるんですよ。
――デザイン以外に、お好きなものはありますか?
着物が好きですね。着物は色や柄が素晴らしく、まるで絵画のようですよね。色無地にも、よく見なければ気づかない地模様があり、その控えめな存在感が美しいんです。つまり、着物は芸術作品なんです。色や柄の組み合わせを見るのも、デザイナーとしての楽しみの一つです。
それから、茶道も好きです。着物への興味が次第に茶道へと広がり、習い始めました。最初は少し敷居が高いと感じましたが、凛とした雰囲気に惹かれました。実際に習ってみると、その魅力が少しずつ分かってきたんです。仕事が忙しく、なかなかお稽古に通えない時期もありますが、今も無理のない範囲で楽しんでいます。
――送っていただいたスライドの「今後取り組みたいこと」に、「海外で茶道」とありました。海外でお茶を点てている写真も添えられていましたが。
友人に頼まれ、タイとハワイでお茶を点てる機会がありました。今年の夏休みには、ハワイの大学の授業で、「デザインと茶道」と題した抹茶ワークショップを実施しました。今後も機会があれば、海外での茶道活動を続けていきたいと思っています。
茶道は楽しみであると同時に、研究テーマとしての可能性も感じています。お茶は、誰かのために点てますよね。私が携わってきた広告デザインも、誰かのために作るものです。また、茶道は道具や空間、しつらえ、所作、もてなしが一体となった総合芸術でもあります。海外でも、その独自の精神性や所作の美しさに興味を持ってもらえることがあります。そうした点でも、茶道の精神とデザインには通じるものがあると思っています。
だから、茶道とデザインを組み合わせて何かできないかと考えています。まだ研究テーマの候補の一つですが、これから研究を深め、いつか博士号の取得につなげたいと思っています。


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