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TOHO
INTERVIEW

2025.10.21

112回 心理学で「心」は読めますか?

人間健康学部

松田 凌 助教 

松田凌(まつだ・りょう)新潟市生まれ。高校まで新潟で過ごし、名古屋の中京大学へ。2020年中京大学大学院心理学研究科博士課程修了。同大学心理学部任期制講師を経て2022年から本学人間健康学部助教。専門は臨床心理学。本学では感情・人格心理学や産業・組織心理学などを担当する。

心理学(サイコロジー)と聞くと、ミステリーやサスペンス好きとしては、他人の心を読んだり操ったりというイメージがまず浮かびます。そこで松田先生に、人の心が読めるか、と素朴な質問を投げかけると「心理学は心を読む学問ではありません」と笑顔で返されました。イケメン俳優と同姓同名ですが、こちらはパパになったばかり。大学院生時代に知り合った妻と育児を分担するイクメンでもあります。

 

――9月に授業実践の「優秀教員」として表彰を受けました。学生による授業の評価が、継続的に高得点となっていることを表彰理由の一つとしています。「心理実習」などの授業で、丁寧な準備指導や、実習中・実習後にきめ細やかな支援をしている点も評価の対象になったようです。

 

 評価していただき光栄です。「心理実習」は国家資格の一つである公認心理師資格の取得を目指す学生が受講します。ただ受講生の全員が卒業後すぐに心理専門職を志すわけではないので、学生一人一人の将来を考え、個人個人の目標に合わせて実習での学びを活かしてもらえるよう意識しています。そのあたりが評価してもらえたのかもしれません。

――実習先との連携も良好で、学生からは、心理職の働く姿を見ることができ、実践的な学びができると評判が良いそうですね。


  
学生たちの実習は、精神科病院や福祉施設などにお願いしています。先ほどもお話しした通り、受講生のなかには進路選択に迷っている学生も多いので、実際に働いている心理職の先生のお仕事を見学させてもらうことで、自身のキャリア選択について考えるいい機会になっているのだと思います。
 また私は教員とは別に、精神科のクリニックで週1回、心理士としてカウンセリングなどの仕事をしています。そこでの話の聴き方や言葉のかけ方などを積極的に伝えることで、現場の様子を想像してもらえるよう意識しています。

 ――公認心理師は新しくできた国家資格ですが、大学院に行かないと取れない資格と聞いています。


  
大学院に行かない選択肢はあることはあるけど現実的ではないし難しいです。資格取得するには基本的には大学院を出る必要があるのが現状です。公認心理師の資格取得を志している学生には、学生の希望する進路やキャリアプランに合わせて個別にサポートしています。例えばゼミ生の中にも将来的に大学院へ行きたいという人もいますので、学部の段階で履修する必要のある科目を一緒に確認したり、大学院入試までに学ぶべき内容や勉強方法に関する指導もしています。あとは勉強するようにプレッシャーをかけることも忘れません。


 
――そもそも心理学に興味を持ったのはなぜですか?なかなか馴染みのない分野のような気がします。


  
心理学部を受験しようと思ったのは「心理学ってなんとなく面白そう」程度の興味があったからです。例えば中学生のころに「ライアーゲーム」というドラマが流行っていたのですが、主人公の一人が心理学の天才として魅力的に描かれていました。その役を演じていたのが松田翔太さんだったので、同姓だったし、なんとなく親近感を感じたのかもしれません。


 
――最初から心理関係の仕事を目指していたんですか?


  
カウンセラーとか心理支援職になりたいという気持ちは、入学時にはあまりなかったですね。学部生の頃に心理学の勉強をしていくうちに心理支援職を目指してみようかな、と思うようになりました。人から相談を持ちかけられることも多かったですし。さっきお話ししたように不純な(笑)動機で入学したのですが、心理学部で学んでいくうちに入学当初とは違った面白さを感じられるようになりました。


 
――違った面白さというのはどんなところですか?


  
心って見えないじゃないですか。見えないからこそ、心理学ではいろんな形で心を捉えようとするんです。学部生時代に様々な領域の心理学を学べたことが、心理支援職を志したり、心理学の研究を続けようと思わせてくれたきっかけになったことは間違いありません。今でも研究や臨床実践に直接関係しない心理学の本もたくさん読んでいます。


 
――その中で先生は投影法が専門ですね。


  
投影法とは心理検査法(心理テスト)の一つのジャンルで、心の病気を抱えられている方、人間関係や家族関係に悩みを抱えている方などをサポートするための道具だと考えてもらえるといいかなと思います。ですので、より大きな括りで言うと臨床心理学という学問領域が私の専門となります。


 
――投影法の中でも先生はロールシャッハ法を研究テーマとしてこられた。スイスの医師ロールシャッハが開発した方法で、インクのシミみたいな模様を見せて、何に見えるか、という分析法です。


  
私たちが働いている心理支援の現場では、ロールシャッハ法はしばしば使われています。インクでできた模様の見え方やその説明の仕方から被検査者の心の状態を理解しようとするのがこのアセスメントツールです。つまりテストに対する反応を通して、その人の生活場面での様子を推測していると言っていいかもしれません。


 
――先日開かれた「日本ロールシャッハ学会」では、若手研究奨励賞を受賞されたそうですね。どんな研究だったか、分かりやすく説明してもらえますか?


 
 今回発表したのはロールシャッハ法の主要な指標間の関連性について、ベイズ統計という統計手法を用いて分析したものです。精神科の患者さんのデータと一般大学生のデータを比較した結果、それぞれ異なる特徴を示していた点が興味深かったです。個人的にもチャレンジングな研究でしたので、評価していただいて光栄でした。


 
――お話を聞いていて、それって「心を読む」ということではないのか、と思いましたが。


 
 冒頭でお答えしたように「心を読む」ことはできません。というかそれは心理学という学問の目指す目標ではありません。ただ「心を理解する」ヒントを得ることができるのは確かかなと思いますし、私が研究しているロールシャッハ法や描画法などもその一助になっています。もちろん投影法や臨床心理学以外の心理学においても「心を理解する」手助けをしてくれますので、いろいろな理解の仕方を学んで楽しんでほしいなと思います。


 
――最後に学生に向けて伝えたいことはありますか。


  
どの講義でも初回に伝えていることなんですけど、心理学って基本的に誰の生活にも関係する学問だと思うんですよ。受講生の生活に全く関係ない内容はないと思うので、自分の生活とか経験とかに照らし合わせながら受けてもらえると、みなさんにとっての一番の学びになるのかなと。心理学はそれができる学問だと思いますし、そこが一番の魅力かなと思います。

クリニックでは白衣

尚爾華学部長から表彰状を

学生の発表を聞く授業中

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