検 索

寄 付

TOHO
INTERVIEW

2025.11.28

スポットライトの当たりにくい学生こそ応援したい

経営学部学部長補佐

手嶋 慎介 教授

ビジネス学科長

手嶋慎介(てじま・しんすけ) 岐阜市出身。2000年愛知学院大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得満期退学。同大学の非常勤講師から2005年津市の高田短期大学の専任講師。2009年本学経営学部に移り助教、准教授を経て2019年から教授。現在、本学では経営学部学部長補佐、ビジネス学科長、キャリア支援センター長であり、学外では日本ビジネス実務学会副会長、日本インターンシップ学会常任理事を務める。

 手嶋研究室を訪ねたのは「和丘祭」の前でした。経営学部のプロジェクト科目とゼミで沖縄銘菓「紅いもタルト」を販売するため準備中でした。「自分でやったほうが早いんですけどね。でも、学生が経験することに意味があるから」とキャリア教育の専門家らしい顔を見せました。どことなくとっつきにくい感じですが、学生の話になると一瞬で人懐っこい笑顔に変わりました。その話の中で「チャンプルー教育」なる言葉も飛び出しました。さて、その意味は?

 

――なぜ、沖縄のお菓子を販売しているのですか?

 沖縄県中部にある読谷村と本学は2016年に連携協定を結んでいます。地域の活性化に貢献できればという思いから、大学祭で紅いもタルトを販売する取り組みを始めました。村と言っても人口4万人の日本最大の「村」なんですよ。読谷村に本社のある企業で作っているのが、村特産の紅いもを使ったこのタルト。生の紅いもは法律で沖縄県外に持ち出せないので、加工品であるこのお菓子を売り出そうと考えたわけです。経営学部の予算で仕入れ、価格設定、ポスター制作、販売までの全工程を学生と一緒に行います。これって経営の実践なんですよ。新しくできたコミュニケーション・デザイン学科に進む学生が、販促用のポスターを作ってくれました。

 
――大学祭でのビジネス実践授業という位置づけですか?

  昨年から始めました。ほかに担当する人がいなかったので私が引き受けたのですが、売れ残って失敗することも多いんです(笑)。でも、それでいいと思っています。学生は、教えなければできないことが多い。成功も失敗も含めて、経験の数を増やすことが何より大切なんです。

 

――その考え方が先生の「経営学」の根本にあるのですか? 

 学生時代から「実際にやってみることで経営は身につく」と感じていました。卒業して講師になり、最初に勤めた高田短大には、企業での実務経験を持つ先生が複数おられ、その影響で日本ビジネス実務学会にも参加し、実務につながる研究発表を行っていました。そうした環境の中で、「仕事に役立たない経営学は違うのではないか」という思いが生まれました。経営は現場でこそ本質がわかる。研究ももちろん大切ですが、実務と研究を融合させることが、本来の経営学の姿だと考えるようになりました。

 

――本学では「キャリア教育」といえば手嶋先生と言われるようになってきたわけですが、それもそういう考えの延長線上ですか?

  高田短大は当時も「社会体験実習」というインターンシップをやっていたんですね。キャリア教育の重要性も言われだしてきて、愛知東邦大学でもそういう方向でやっていこうとインターンシップ専門の教員を募集していました。私は高田でやっていたからと応募し、採用されました。当時、「キャリア教育」科目を専門に担当する人は少なかったと思いますよ。ちょうど国もキャリア教育推進に力を入れ始めた時期で、以来、ずっとキャリア教育一筋です。専門が経営学だと思われていないかもしれませんね(笑)。
 それと、戦前の東邦商業学校は「社会学実習第一課」という名の、今でいう「インターンシップ」を行っていたんですよ。それを知って、すごい縁を感じたものです。

 

――インターンシップは今、企業とのマッチングの印象が強いですよね。

 以前は、フリーター化が問題視されていた背景もあり、「きちんと働く力を身につける」側面が強かったと思います。しかし現在は、就職活動の一環として捉える学生がほとんどです。でも私は、経営学部の学生には学びの深まりを持ち帰ってほしい。企業での経験の中で、講義で習った「経営組織論」や「コスト管理」などを思い出し、自分の思考にフィードバックしてほしいんです。インターンシップとは、学びと実体験をつなげる場であるべきだと思っています。

 

――先ほどからお話をうかがっていると、学生には厳しいことを言っているように聞こえますが、それでも言葉の端々に学生への愛情みたいなものが感じられます。学生との距離が近い、フラットな目線の人という評価も聞きますが。

 愛情かどうかは分かりませんが、学生から切り離されたら私は何もできません。私が最も力を発揮できるのは、キャリアや学生支援の分野だからです。学生の間では「陽キャ」「陰キャ」といった言葉が使われますが、陽キャの学生は目立つし、自分で動く力もある。周囲から引っ張り上げてもらえる機会も多い。でも私は、スポットライトの当たりにくい学生にこそ目を向けたいんです。自分はダメだと思っている学生に、「そんなことはないよ」と伝えたい。スターじゃなくても、自分のペースで努力している学生はたくさんいます。そうした一人ひとりが認められる場をつくりたい。「裏のTOHO Stories」とでも言いますか、スポットライトの光が届きにくい学生にも、ちゃんと光を当てたいんです。そうした学生に「あなたにはあなたの価値がある」と伝えられる場所をつくっていきたいと思っています。

 

――やっぱり学生が好きなんですね。

 好きだとは思ってないけど、好きなのかな(笑)。沖縄料理にチャンプルーってあるじゃないですか。さまざまな食材を混ぜ合わせてつくる料理。私は大好きなんですが、同じような素材ばかりだとチャンプルーにならない。美味しくないでしょ。話は飛躍するかもしれませんが、愛知東邦大学の「オンリーワンを、一人に、ひとつ。」という理念も、私はチャンプルーに近いと感じています。同じような学生ばかりじゃ、チャンプルーにならないですからね。多様な個性を持つ学生が混ざり合うことで、大学は豊かな学びの場になる。ゼミとプロジェクト科目の混在、学年や学部を越えた越境、さらには他大学との共同研究――異なるもの同士が混ざり合い、新しい価値を生む。それが、私の考える「チャンプルー教育」です。

 

――最後に本学の学生に一言

 一言でいえば、「もう少し勉強しようよ」です。ここでいう「勉強」とは、座学だけではありません。今、自信をなくし「自分はダメだ」と思いこんでいる学生を、その思いから引き上げたい。それがキャリア教育の本質だと思っています。社会に出ると、偏差値とは違う基準で評価されます。ちゃんと頑張る人・頑張らない人、働ける人・働けない人――そうした軸で見られる世界です。「自分はこの程度だ」と決めつけないでほしい。あなた自身の価値は、大学のランキングとは関係ありません。そして、あなたには必ず可能性があります。今の社会は、目の前に楽しいことがいっぱいあったりするけど、楽なほうへ逃げるのではなく、そこで満足するのではなく「自分の力で未来を切り開いていけるよ」って伝えたいですね。

キャリア支援センター長として鵜飼学長と同席

大学祭では紅いもタルトを販売

学生から贈られた名前入りの茶碗

教室では学生との距離も近い

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