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TOHO
INTERVIEW

2015.10.21

【第13回】バイト先の無理難題には毅然とした対応を。かけがえのない大学生活4年間を有意義に

経営学部地域ビジネス学科

浅野和也准教授

労務管理

浅野和也(あさのかずや)

静岡県出身。中京大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。中京大学、愛知東邦大学非常勤講師、経営学部助教を経て2013年4月より現職。著書に『トヨタ企業集団と格差社会』共著(ミネルヴァ書房)、『トヨタの労使関係』共著(税務経理協会)など。

試験前や試験中などお構いなしにシフト入りを求められる。休みたくても休めない。割り増しなしの残業が延々と続く――。学生生活を蝕む「ブラックバイト」が大きな社会問題化しています。「労使関係論」の科目を担当し、学生委員でもある経営学部の浅野和也准教授は、「一人で迷わず労基署に相談するなど毅然とした対応を」と呼びかけています。

――「ブラックバイト」が学生生活に大きな影響を及ぼしていると言われています。愛知東邦大学でもブラックバイトにもがいている学生たちは多いのでしょうか。

ブラックバイトが無視できない社会問題としてクローズアップされるようになったのは5、6年前からですが、残念ながら本学でもブラックバイトの特徴が散見されるバイト先で働いている学生たちは少なくないようです。ゼミの学生たちとの会話や、同僚教員たちが知りえた情報でも、講義中の学生のスマホに、「きょう夕方のシフトに入ってもらえませんか」などのメールやLINEでの連絡が入ってくる。残業代を払わないサービス残業も蔓延しているようです。バイト先が人件費を抑えるためにぎりぎりの人数で回していて、一人休むともう回らなくなってしまうわけです。

――先生の学生時代はどうでしたか。

私も学生時代、やはりコンビニやレンタルビデオ店などでバイトをしましたが、仕事内容はのんびりしていて余裕がありました。たまに急きょシフトに入ってほしいという場合も家に「息子さんいますか」と電話がかかってくるので、居留守も使えました。ところが今は、仕事の中身も濃いうえに、学生への理解が全くなく、「授業なんかさぼればいいんだ」と平気で言う経営者さえいます。こうした出勤要請は必ずしも違法ではなく、学生も断ればいいのですが、学生も自分が断ったら迷惑をかけるのではないかという思いがある。「自分が信頼されているからこそ声をかけられている」など、人間関係、責任感などいろんな思いが入り混じり、要請を断り切れない事態も招いています。

――学生委員会として、ブラックバイト対策に動き出していると聞きました。

少しずつですが対策は話し合っています。10月8日には情報集めもあり、名古屋市内で開かれた各大学の学生課や就職指導担当者を対象にしたセミナーに参加してきました。ブラックバイトの監督官庁とも言える厚生労働省の取り組みを愛知労働局の担当部長が講演し、より悪質なブラックバイトの事例として、「辞めたいなら代わりを探して来い」「辞めたら損害賠償を請求する」と学生を脅すケースを紹介しました。代わりを見つけなければ損害賠償するなどめちゃくちゃな話です。

――学生も基本的な法律知識が必要ですね。

そうです。ブラックバイト側には、今の学生はそうした知識にうといと、たかをくくっている面があります。学生が見下されているんです。学生もぜひ労働法を学んで法律の知識を身につける必要があります。私のところでもいいですし、他にも法学科目を持っている先生もいますので、声をかけてください。講演でも愛知労働局の方が言っていましたが、違法だと思われる場合、ぜひ労基署や愛知労働局などに設けられている相談コーナーに連絡して相談してほしいそうです。

――学生たちも毅然とした対応が求められているわけですね。

厳しい経済情勢や家計の中で、今の学生は2人に1人が奨学金に依存しています。月々10万円を有利子で4年間借りると返金学は646万円に及びます。返還の負担を考えて在学中からバイトに励まざるを得ない学生の立場も理解できます。しかし、バイトにのめりこんで昼夜の生活が逆転し、朝起きられない。1限目はおろか2限目の授業にも出られなくなる。面倒くさいから1日学校を休んでしまう。そんな生活が1週間、2週間と続く。授業を1か月も休めば単位取得が厳しくなり、最悪の場合、4年で卒業もできないということになります。「親や兄弟に迷惑をかけられない」という責任感の強い学生も多いだけに、何としてもブラックバイトにのめり込みそうな時は、冷静になって立ち止まり、毅然とした対応を取ってほしいと思います。

――学生たちにエールをお願いします。

私は愛知東邦大学の学生たちの良さは、コンビニやファミレス、居酒屋など接客業のアルバイトをしている学生が多いこともあるかも知れませんが、人と接するのが上手だと思っています。人とのやりとりの中から培ってきた能力は高い。注文をつけるとすれば、その能力を生かすボキャブラリーを豊かにしてほしいことです。いずれにしろ、学生時代は何にでも挑戦できる貴重な4年間です。チャレンジして失敗してもやり直しが効きます。社会に出たらできないことが出来る特別な時間帯でもあることを自覚して、かけがえのない4年間を有意義に送ってほしいと思います。

■ブラックバイトでの愛知労働局相談窓口

企画室総合労働相談コーナー(名古屋合同庁舎第2号館)052-972-0266
栄総合労働相談コーナー(中日ビル10階 南側エレベーター) フリーダイヤル0120-948-537

「ブラックバイト問題を一人で抱え込まないこと」と語る浅野准教授

「学生時代にボキャブラリーを増やす訓練を」と語る浅野准教授

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