愛知東邦大学の女子サッカー部が一般社団法人「TOHO LFC(Lady Football Club)」を設立しました。大学のクラブとして3年後になでしこリーグ参入を目指し、「日本一応援されるチームになろう」というチームの理念とは、どう関係するのでしょうか? 7年前にはヘッドコーチとして戦力面について語っていただいた米澤監督に、2度目の登場をお願いしました。
――先ず社団法人を設立した目的を伺います。
社団法人設立が目的ではなく、長い道のりの途中にすぎません。3年後の2028年度に「なでしこリーグ」に参入するのがとりあえずの目標です。それには強化ももちろんですが、まず資金と体制作りが必要です。なでしこリーグの入会金が100万円、年会費が500万円かかります。大学にお願いすることにもなりますが、それだけではなく、スポンサー企業の協力は欠かせません。しかし大学の一クラブ活動が多額の資金を集めることは難しいです。信用も必要です。その第一歩が法人格を取ることでした。なでしこリーグに加入している日体大や静岡産業大などの大学チームも社団法人になっています。
――どういう経緯で法人を設立することになったのですか?
私の友人で、スポーツビジネスの経営者の金漢才(キム・ハンジェ)さんという方がいます。彼と女子サッカー部について話しているうちになでしこリーグ参入を考えるようになりました。そのためには法人格を取得しなければならないことを知り、東邦学園の榊直樹理事長にも相談させていただいたところ、「頑張って」と励まされました。金さんからご紹介していただいた弁護士さんに相談し、定款や理事会などの法人組織も整えていただきました。私の所属している東邦学園の100%子会社「株式会社イープロ」の監査法人の税理士さんが監査をしてくれています。みなさんの無償の協力で話が進み、私が理事長となり、2月19日に設立、登記が済みました。
――法人設立が目的ではないというと、その次は?
私はサッカーを通じて人生を豊かにし、生涯スポーツとしての女子サッカーができる環境作りを考えています。現在、小・中学生対象の女子サッカースクール「TOHO Ladies Football Academy」を開いて全体で40人以上の生徒がいます。小学生対象の「ガールズサッカーフェスティバル」も10年以上続けています。本学卒業生を中心とした大人のチームも設立され、東邦高校にも今年から女子サッカー部ができました。年代によっては行き場のなかった女子サッカーですが、小学生から大人までのサイクルができました。大学のなでしこリーグ入りはその一環です。大学のチームからプロに飛び立って行く人もいるでしょう。
――「日本一応援されるチームになろう」という理念との関連は
なでしこリーグに加わることによって⼥⼦サッカーの認知度を上げ、地域の⼈たちやファンの方々に「日本一応援されるチーム」を⽬指しています。練習場のある日進市の市制30周年記念の「なつまつり」を、本学の日進グラウンドで開きました。予想を上回る大勢の市民が遊びに来てくれ、部員たち総出で盛り上げました。「なつまつり」を開いたことで、協賛企業がぐんと増えました。
認知度を上げるためにSNSをやっています。部員から8人のSNSチームを作り、専門家にも入っていただき、インスタグラムやTikTokに毎日投稿しています。残念ながら、女子サッカーの人気は男子サッカーとは比べ物にならないぐらい低い。応援はもちろんですが、先ずは女子サッカーを認知してもらいたいと活動しています。
――最近、プラクティスシャツ(練習着)を作りましたね。
これも資金集めの一環で、「マスプロ電工」さんをはじめ日進市内や愛知県の企業に賛同してもらいました。29社がパートナー企業様になっていただき、練習着を作りました。黒地で、裏と表、袖にスポンサーになっていただいた企業名が入っています。これを着ていることで学生も各企業とつながっている自覚ができると思います。3月20日に、サッカー日本代表のW杯予選のパブリックビューイングを「ららぽーと東郷」で開いた時も、スポンサーの「三幸電子」さんが無償で大型ビジョンを提供していただきました。部員たちはこのシャツを着て、ゲーム前やハーフタイムに子どもたちと射的や輪投げ、じゃんけんゲームなどで盛り上げていました。市民やスポンサー企業のみなさんが「あの子たちがやってるから試合を見に行こう」となってくれれば、狙いは成功です。
――なでしこリーグ入りには、あとは戦力の充実ですね。
1、2年生に力のある選手が多く入ってきて、それが上級生を刺激して、戦力アップしています。プロが注目する選手もいますし、今年はかなりやれるんではないかと思っています。