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語り継ぐ東邦学園史
歴史を紐解くトピックス

第71回

スチューデントホールの完成

1988

更新⽇:2020年2月7日

収容定員800人時代

右下にテニスコートの一部が見えるスチューデントホール

 東邦学園短大では商経科(商業実務、経営実務、秘書の3専攻で入学定員400人)となった1987(昭和62)年度、新入生(23回生)490人が入学してきました。前年度から入学定員が400人となっていたキャンパスは収容定員800人を大きく上回る900人を超す学生たちであふれました。

 入学式は、バスケットコート1面分しかない、老朽化が目立つ体育館で行われました。愛知県立豊田高校出身で、経営実務専攻に情報コースとして入学した森川早苗さん(旧姓柴田、春日井市)は入学式で、「この古い体育館での入学式はこれが最後となります。皆さんが卒業する時は、この体育館は取り壊され、新しい〝スチューデントホール〟に生まれ変わっています」と知らされたことを覚えています。

 入学式が終わると体育館の取り壊しが始まりました。体育の授業は下出記念館2階での卓球のほか、東山のテニスコート、星ケ丘のボウリング場などに繰り出しました。食堂は下出記念館内にありましたが、薄暗く、昼食時はすぐ満員となり、あきらめて外に食べにいく学生たちが相次ぎました。

 総務課長も務めた杉谷正次経営学部教授は「旧体育館では、入学式や卒業式の最中に、雨音がバリバリして学長のあいさつも聞こえなくなる時もあった。食堂、憩いの場も足りず、収容定員が800人になったのに、学生サービスが全く追いつかず、多目的施設と体育館を備えたスチューデントホールは見切り発車の状態で着工されました」と振り返ります。

 学園開設65周年事業として建設が進められたスチューデントホール(S棟)は、着工1年後の1988(昭和63年)3月25日完成しました。地下1階、地上2階の3階建て、床面積は約5200㎡。350人収容の食堂や体育館、茶道や華道に使う和室も設けられました。

 同ホール披露も兼ねて9月24日に開催された65周年記念祝賀会で下出保雄理事長は、「スチューデントホールの完成で、学生の福利厚生施設が飛躍的に充実しました」と、来賓ら約800人を前に胸を張りました。翌日の中日新聞は、下出理事長のあいさつとともに、「ホテルのティールームのような食堂が学生に人気」と伝えました。

胸張る学生たち

女子学生が行き交うスチューデントホール前(1991年アルバム)

 スチューデントホール1階には学生サービスセンター、多目的ホールが設けられました。短大卒業生の戸澤和三、操さん夫妻(3回生)が経営する校内売店「TJCショップ」も下出記念館から移りオープンし、お菓子から電気製品までを販売しにぎわいを見せました。

 「みすぼらしい体育館を見ているだけに、テラスで憩えて、おしゃれな食堂が入ったスチューデントホールが完成した時は、予想以上に明るく、広く感じられて、おーっという感じでした」。森川さんが懐かしそうに語るように、スチューデントホールは学生たちの誇りであり、学生生活の拠点となりました。

 クラブ活動や自治会活動、和丘祭の準備などで、下出記念館2階のクラブハウスに寝泊まりしていた学生たちは、銭湯に行かなくても、スチューデントホール2階体育館に設けられたシャワールームを使えるようになりました。

 バスケットコート2面が使える体育館は入学式や卒業式、体育の授業やクラブ活動だけでなく、東邦高校や東邦会(高校同窓会)も利用する学園のイベント会場としても使われるようになりました。

 東邦会は1988年6月12日、同ホールで65周年記念総会・祝賀会を開催しました。約500人の参加者の中には、この年3月、東邦高校の男女共学1期生として卒業したばかりの女子卒業生たちも多数が参加。高校19回生(1968年卒)の俳優奥田瑛二さんも駆けつけ、華やかな祝宴を盛り上げました。

 森川さんによると、テレビドラマでも売れっ子だった奥田さんが来るということで、会場には短大生たちもどっと繰り出しました。森川さんも奥田さんと一緒の写真を撮ってもらったそうです。

 体育館舞台は和丘祭のイベントステージにもなり、第24回和丘祭(1988年)では、「陣内孝則コンサート」が行われました。森川さんら23回生卒業アルバムには、高校時代からザ・ロッカーズのボーカルとしても人気だったサングラス姿の陣内さんが、マイクをわしづかみして熱唱するショットが収められています。

テニスコート、ゴルフ練習場も誕生

テニスコート、ゴルフ練習場を紹介した「HOYU」紙面

 スチューデントホールがオープンした翌年1989(平成元)年9月には、現在のC棟のある一帯にテニスコート、ゴルフ練習場が誕生しました。

 短大同窓会誌「HOYU」14号(1990年3月発行)は「完成‼テニスコート・ゴルフ場」の記事を特集しています。

 <学生たちの待ちに待ったテニスコートとゴルフ練習場が完成し、9月11日、理事長、学長始め、多数の関係者出席のもとに始球式が行われ、本格的に使用が開始されました。テニスコートは、ハードコートでナイター設備もあり、これまで他のテニスコートを借りて短い時間しか練習できなかったテニス部にとって、夜遅くまで練習が可能になったことはこの上もない喜びでしょう。ゴルフ練習場は6打席あり、やはりナイター設備が整備されていて、今迄の練習不足が一気に解消されて、ゴルフ部にとっては飛躍の年になると思われます>

 自前コート誕生の成果か、テニス部は同年11月23日と26日に行われた愛知県私立短期大学体育大会硬式テニスの部(愛知淑徳大、椙山女学園大テニスコートで開催)で3位に入り健闘しました。

 テニスコート、ゴルフ練習場の完成を伝える「HOYU」14号には、「難関‼東邦短大入学」という見出しで、1989年度の入学状況を伝えています。2345 人が受験、入学者が464人で、入試倍率は5.1倍に達していました。

 <現在、短大に入学するのは大変困難な状況です。もし貴方(同窓生)のお子様が、入学を希望されるなら、入学案内・入試資料・進学相談会の案内等、受験に必要な資料が至急お手元に届くよう同窓会としても協力します>

旭豊関へ化粧まわし贈呈式

校章を縫い込んだ化粧まわし姿の旭豊関

 スチューデントホールでは1993(平成5)年11月25日、東邦高校初の関取となった元小結の旭豊関(現在、東邦会関東支部長でもある立浪親方)が、2度目の幕下優勝を飾り、十両昇進を確実にしたため、東邦高校関係者たちによる祝賀会が開かれました。久野秀正元校長を会長とする後援会からは、母校の校章を縫い込んだ化粧まわしが贈られました。

 立浪親方の本名は市川耐治さん。東邦高校が男女共学に踏み切る前年の1984(昭和59)年4月に入学しました。

 立浪さんは、東邦高校を卒業した1987(昭和62)年3月に「市川」の名で番付外として初土俵。「旭豊」に改名し、幕下2回の優勝を経て1993年九州場所で十両に昇進しました。1995(平成7)年1月の初場所で十両優勝し同年春場所で初入幕。殊勲賞、敢闘賞を各1回受賞し、1999(平成11)年1月に引退し、7代目立浪を襲名しました。

 化粧まわしづくりのために、寄付金集めにも奔走したのは元教員の本多黙雷さんです。春日井市の自宅が立浪さんの実家の近所、長男が立浪さんと同級生で、同じ中学校から一緒に東邦高校に進んだのも縁で、相撲の世界に飛び込んだ立浪さんを応援してきました。

 立浪さんは中学時代には水泳部で活躍し、背泳ぎで愛知県新記録を出していました。東邦高校では空手部に入部したものの1年で退部し、クラブ活動には参加しませんでした。卒業直前に「相撲取りになる」と宣言し、当時の教員たちを驚かせたそうです。大島部屋に入門しましたが、番付外の前相撲時代には部屋を逃げ出し、本多さん宅で一晩泊まったこともあったそうです。

 スチューデントホールで、校章入り化粧まわしを贈られた立浪さんは、「大変励みになります」という喜びの声を、「旭豊後援会ニュース」(1995年3月30日)に寄せています。

東邦学園卒業生つながりでの応援

立浪親方と森川さん(左)、久保さん

 男子校としては立浪さんら38回生が最後となった東邦高校は1985(昭和60)年度から共学校として新たなスタートを切りました。同年度の入学者(39回生)は男子464人、女子422人でまだ男子比率が女子比率を上回り52.3%でした。

 しかし、共学2年目の1986年度(40回生)からは男女比が逆転しました。1986年度は男子239人、女子266人、1987年度は男子334人、女子361人です。共学4年目の男女比について、「東邦新聞」139号(1988年4月8日)は「1000名を超す新入生 女子が6割占める」と紹介しています。1988年度新入生は男子401人、女子619人で女子が6割を超し、商業科に限れば女子は8割に及びました。

 生活指導部時代が長かった本多さんは、立浪さんら最後の男子校生たちの思い出を懐かしそうに語ってくれました。「1、2年生たちはブレザーの制服なのに、3年生だけは黒の学生服。元気のいい生徒が多く、にらみ合って対峙したことも何度もあります。体格のいい〝市川少年〟ともよくにらみ合いましたよ」。

 高校は異なるものの立浪さんと同学年の森川さんによると、森川さんら短大23回生までは東邦高校出身者は男子だけでしたが、1学年下の24回生からは共学世代の東邦高校から女子卒業生も入学してくるようになりました。

 森川さんは、立浪さんの東邦高校時代の恩師にあたる保古久志先生とつながる偶然の縁で、名古屋場所ではずっと立浪部屋に足を運び応援し続けています。同じ東邦学園OBということで、立浪さんも歓迎してくれ、ここ数年は、ちゃんこ鍋をご馳走になる機会にも恵まれています。昨年(2019年)夏も、短大後輩の久保明美さん(24回生)らとともに名古屋市南区のお寺にある立浪部屋を訪れ、楽しいひとときを過ごしました。

法人広報企画課・中村康生 

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