検 索

寄 付

語り継ぐ東邦学園史
歴史を紐解くトピックス

第77回

新設大学からの発信

2001

更新⽇:2020年4月30日

入学式3日後のオリエンテーション合宿

長浜市の商店街と参加した平尾ゼミの新入生たち

 2001年度に開学した東邦学園大学では入学式から3日後の4月9日、新入生オリエンテーション合宿が行われました。1年生250人余と教員20人が8台のバスで向かったのは滋賀県長浜市。1拍2日の合宿は、これから始まる学生生活を円滑に送れるよう、学生同士や教員とのコミュニケーションを図るとともに、合宿のメインである「見学会」を通して、「実態に触れて自分で考える」という東邦学園大学での学びの姿勢を体験してもらう狙いがありました。

 参加者たちには「ガラスをテーマにした商店街の復活に成功した長浜市中心商店街」と「街づくりの理念が疑問視されている彦根市中心商店街」というタイトルが掲げられた「見学の手引き」が配られました。森靖雄経営学部長が執筆したもので、森学部長はオリエンテーション合宿と見学会の目的を新入生たち語っています。(抜粋)

 <皆さんはこれから「地域ビジネス」について学びます。「学ぶ」方法はいろいろとあります。本を読んだり、資料を調べたりするのは有力な方法ではありますが、それがすべてではありません。実際に「地域」へ出かけて、「現場から学び取る」ことも重要です。そこで、今、全国的に注目されている二つの「まち」を見学して、皆さんに「地域の見方」を学んでもらうことにしました。

 そうは言っても、「見方」には個人差があり、「これが正しい」と言い切れるものではありません。「いろんな見方がある」といのが正解です。だから、あまり堅苦しく考える必要はありませんが、「自分はこういうふうに考えた」という意見は持つ必要があるでしょう。そうした自分の見方を友達と話し合ってみるところから、意見や見方の違いを学ぶことができ、「自分の見方」が確立できるようになります。これこそが「大学で学ぶ」目的です>

 

学生17人の「見学記」を発行

開学したばかりの2001年7月に出版された2冊

 オリエンテーション合宿に参加した学生17人のレポート・感想文を収録した「商店街見学記」が7月28日付で発行されました。『2001 オリエンテーション合宿 商店街見学記』「(A5版80ページ)で、高校生たちに向けた東邦学園大学からのメッセージ発信でもありました。

 新入生たちのレポートには、「合宿を通して友人ができました。右も左も分からなくて不安な大学生活に明るい灯がともりました」(高橋真一さん)など、学生同士や教員との交流の成果を指摘する感想が目立ちました。鈴木浩平さんは「商店街の良さ、悪さ等の、普段あまり見ることがないものごとを見ることができてとても勉強になった。入学して間もない合宿だったけどすぐに友達もできた」と振り返っています。

 新入生297人のうち女子は37人ですが、参加した女子学生たちも合宿での手応えを書いています。「商業のことが学びたくてこの大学に入学し、3日目でこんなに貴重な体験が出来るとは思ってもいませんでした。さびれた街を復興することは不可能に近いと思っていた私の考えを見事に壊してくれました。商売人側と観光客側の考えで歩いてみて、今まで気づかなかった小さな事にも気づくことができました」と書いたのは北條里佳さん。土屋好美さんさんは「女子が少なく不安で、はっきり言っておもしろくない商店街見学と思ったが、レポートを書き終えたら現地の人たちは大変苦労していることが分かった」と振り返っています。

 

「東邦学園大学式教育」の実践

大学、短大名が掲げられた正門

 岩田啓志さんは「高校と違って大学は自由でもあるけど、自分の責任がすごくあるんだなあと改めて分かりました。本当に合宿があってよかったと思いました」。家里明さんも「ホテルでは履修登録などをやったりして先生ともいろんな話ができたし、とてもいい経験やったと思う。先生がこんなにも生徒と接してくれるとは高校ではとても考えられないことやし」と方言なまりで合宿での収穫を報告しています。

 種村亮太さんは、「全体的に良くも悪くも時間にルーズな印象を感じました。新入生たちはいつまでも子供ではないのだから、ルールも守らないで大人面をしてもらいたくない」と、参加した学生たちへの不満を述べながらも、「合宿では学生よりも先生方とお話しさせていただいた感が強い。ちょっとしたこともお話を伺うことができ、高校とは違う新鮮な感覚があった。少なくともこれからの学生生活に期待と不安を両方抱かせる合宿であったことは間違いない」と書いています。

 『2001 オリエンテーション合宿 商店街見学記』で、森学部長は「東邦学園大学式教育」について述べています。

 <東邦学園大学では、すべての講義で現地見学できるわけではありませんが、可能な限り、「実態に触れて」「自分で考える」勉強方法を追求しています。その意味ではこの見学会は「東邦学園大学式教育」の見本みたいな行事でもあります。

 私たちはこういう「現場を重視する」勉強の仕方に参加したいと考える皆さんに入学してほしいと考えています。現場や社会は日々変化していますから、教える私たちも毎日が勉強です。地下鉄の駅に近く、名古屋の様々なタイプの商店街や工場にも出向きやすい「東邦学園大学」で皆さんと会えるのを楽しみにしています。ぜひ一緒に勉強しましょう>

 編集責任者の深谷和広助教授(現教授、学部長補佐)も編集後記で「編集を通じて、この合宿研修が、実態にふれて自分で考えるという東邦学園大学教育の実践の場であったと強く感じました」と書き残しています。

高校生向け新書「地域ビジネスが世界を変える」

2003年度「要覧」に掲載された専任教員

 誕生したばかりの東邦学園大学を紹介する新書本も刊行されました。開学早々から編集作業に取りかかり、就任予定者も含めて27人の専任教員たちが1年生の教材用、高校生たちのへの大学紹介用に執筆した『地域ビジネスが世界を変える』(本文182ページ)で、7月20日に発行されました。

 丸山惠也学長は巻頭の「はじめに」で、「地域発展を担う革新者(イノベータ)」と東邦学園大学の目標を書きました。創設者である下出民義について紹介したうえで、民義が「真に信頼して仕事を任せることのできる人」として求めた人材育成を建学の理念としたことなどを紹介。そのうえで、「東邦学園大学の全体像をかなり詳しく紹介する手引書を作成しました。広く全国の高校の先生方に、本学に関心を寄せてくださる受験生、保護者、企業の皆さんに本書を役だてていただければ幸いです」と結んでいます。

 各章テーマと担当教員です。

 

第1章 東邦学園大学の教育は?

 1.地域ビジネス学科では何をするのか 森靖雄(経営学部長) 2.好きな進路が選べるスグレモノ 森靖雄

第2章 企業経営

  1.新しい時代の企業の社会的責任 井上秀次郎(教授)2.国民経済における中小企業の真の役割 阿部克己(助教授)3.自動車産業に生産方式の発展を見る 丸山惠也(学長) 4.現代企業はどう運営されているか 井上宏(教授) 5.企業はだれのために存在するか 山極完治(教授)

第3章 地域経済

 1.日本経済再生のカギを握る地域経済 森靖雄2.グローバル市場に挑戦する地域ビジネス 榧守哲士(教授)3.開発途上国の経済発展を考える 游仲勲(教授)4.経済を異なる理論で比較する 水谷謙治(教授)5.「働く」とはどういうことだろう 浅生卯一(教授)6.生活に直結する自治体の資金を調べる 野呂昭朗(教授)

第4章 経営システム

 1.システム論でグローカル思考 一楽信雄(教授)2.ビジネスに不可欠となった統計分析 平尾秀夫(教授)3.文化、歴史を視野に入れてモノづくり解明 田村豊(助教授)4.戦争のための情報システムではない 5.あなたはコンピュータ・ファイリングができますか 杉谷正次(助教授)

第5章 会計

 1.「簿記のすすめ」と「学問のすすめ」  後千代(助教授)2.「会計ビックバン」と今後の行方 深谷和広(助教授)3.商品の国際取引にもルールがある 丹羽克治(教授)

第6章 起業・後継者育成

 1.自立型の人間を目指す時代 安保邦彦(教授)2.イノベーション時代の後継者育成 酒向武(教授)3.アメリカNPOとコミュニティビジネス 岡部一明(助教授)4.「雇う・雇われる」関係を解明する 長南仁(助教授)

第7章 総合基礎科目から

 1.マスメディアの功罪を探る 津田正夫(教授)2.私たち人類の存在は偶然か 高木靖彦(助教授)3.「市場原理」で動く経済のからくりを知る 中山孝男(助教授)4.多様な語学や学び方が選べる 西部真由美(講師)、竹越美奈子(同)ほか

「東邦学誌」と「要覧」

大学・短大の『東邦学誌』(2001年)と初めて発刊された「要覧」(2003年)

 東邦学園短大が開学して4年目の1968年3月に創刊された『東邦学誌』は東邦学園大学との合同編集でバックナンバーを継続しました。新たなスタートを切った2001年6月発刊の第30巻第1号は論文7本、研究ノート2本が集録されました。論文2本は短大教員のものですが他は大学教員が執筆しました。丸山学長は「東邦学園大学の開学を記念して」という巻頭文で、船出した大学の決意を述べています。

 <近年の少子化にともなう18歳人口の減少のなかでの大学激増により、日本の大学は、厳しい冬の時代を迎えていることは周知のことであります。本学もこういう厳しい環境のなかで、教育の新たな実践と新たな地域ビジネス学の確立に取り組んでいかなければなりません。そのためには、教職員をはじめ学園全体が、この目標に向かって全力をあげて進んでいくことが必要であると考えております>

 一方、2003年度には『東邦学園大学・東邦学園短期大学 要覧 2003』も発刊されました。A4版折りたたみ8ページで、建学の理念や大学・短大を主とした簡単な年表のほか、大学と短大の現状が、数字や簡潔な文章で網羅的に紹介されています。要覧発刊は初めてで、以降毎年発刊され、現在の『東邦学園要覧』(愛知東邦大学と東邦高校)に至っています。

 「要覧2003」には、「学内の主要定期刊行物」として5点が紹介されています。①『東邦学誌』(年2回定期発行)②地域ビジネス新書(隔年発行)2001年7月20日『地域ビジネスが世界を変える』(アジール・プロダクションン発行)、2003年8月1日『地球社会に生きる 地球を創る』(唯学書房発行)③東邦学園大学編『基礎演習体験学習 工場博物館見学記』(年1回定期発行)④東邦学園大学・短期大学後援会誌『邦苑』(年1回定期発行)⑤学園広報誌『東邦キャンパス』(年3回定期発行)

法人広報企画課・中村康生 

 

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