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語り継ぐ東邦学園史
歴史を紐解くトピックス

第90回

全国舞台へ先陣切った軟式野球部

2011

更新⽇:2020年11月27日

「楽しむ野球」めざして

創部2年目の軟式野球部。前列右から4人目が風間さん(2008年秋)

愛知東邦大学が人間学部を開設し経営学部と2学部体制で新たな船出をした2007年度。日進市の東名高速道路沿いには野球場とサッカー場を備えた日進グラウンドがオープンしました。野球場は両翼92m、中堅115m。人工芝サッカー場は97m×60mで観戦用スタンドも設けられました。いずれも夜間照明で日没後の活動も可能になりました。

3部リーグの硬式野球部は専用野球場の完成で2部リーグ昇格が、サッカー部も愛知学生リーグから東海2部リーグ昇格への期待が高まりました。女子サッカー部も新規クラブとして産声をあげ、2007年6月から日進グラウンドで活動を開始しましたが、全日本大学女子サッカー連盟への加盟を目指し部員集めに力を入れている段階でした。

2007年度には軟式野球部も発足しました。創部メンバーは保健体育教員をめざして入学してきた人間学部人間健康学科1期生たちが中心で、「野球を楽しむ」ことを主眼にした同好会でした。初代キャプテンの風間拓也さん(京都・花園高校出身)も、高校時代には硬式野球部に所属していましたが、「楽しみながら野球を続けたい」と、入学して間もなく軟式野球部員を募ったところ10数人が集まりました。顧問は人間学部長だった山本正彦教授が引き受けてくれました。

練習は硬式野球部の練習がない月曜日は日進グラウンドで行いましたが、それ以外は自分たちで使える公園を探し出して行いました。日進グラウンドには専用の用具保管場所もなく、置き忘れた野球用具が行方不明となり、再度買いそろえるため、山本教授に声をかけてもらい、教職員に寄付を募ったこともありました。

それでも創部2年目の2008年秋季2部リーグでは2位に輝きました。2位を決めた時の部員たちの笑顔が「東邦キャンパス」108号(2009年6月24日)に掲載されていました。紺地に赤の「TOHO」文字の初代ユニホーム。部員は18人。前列右から4人目、右手を上げてVサインしているのが風間さんです。この軟式野球部紹介記事の中で風間さんは、「仲良く楽しみながらの野球に取り組み、学生会や他の部活への参加、実習授業のサポートなどの学校活動にも積極的に関わっています」と書いています。

全日本学生軟式野球選手権大会に初出場で優勝

第34回全日本学生軟式野球選手権大会で優勝(2011年8月)

軟式野球部には、硬式野球部の退部組も増え始めていました。風間さんが主将を引退し、2008年入学の樋口右季さん(人間学部)が新たに主将に就任し、「これからは同好会ではなく部として強いチームをめざそう」という方針が打ち出されました。

2009年に人間学部に入学した河本拓也さんは大阪市出身。小学生から野球を始め、甲子園にあこがれ、熊本県の秀岳館高校に進学。3年生夏の県大会では準決勝まで勝ち上がりましたが甲子園出場の夢は果たせませんでした。愛知東邦大学へは高校の保健体育教員になる夢をかなえようと入学しました。

硬式野球部は2009年、愛知大学野球連盟3部リーグから2部リーグ昇格をめざして厳しい練習が続いていました。その一方で、チーム運営や指導方針への反発から退部し、軟式野球部に合流する選手も相次いでいました。秀岳館時代の河本さんの捕手としての活躍を知っている軟式野球部員から、「本格派速球投手の球を受けるキャッチャーがいない。ぜひ入ってほしい」と声がかかりました。河本さんは一度断ったものの、「どんな練習をしているか見てみよう」と月曜日、日進グラウンドを訪れました。軟式野球部員たちの予想以上に真剣な練習ぶりを見て、河本さんは入部を決めました。

2010年春季リーグが終わった段階で2年生の河本さんは主将に推されました。軟式野球部は中部日本学生軟式野球連盟2部に所属していました。春季リーグが3位に終わり、1部入替戦に進出できませんでした。上級生たちから、「何かを変えないと秋季も同じ結果に終わってしまう。チームを強くするために下級生だが河本に任せよう」という声が上がったためでした。

主将を引き受けた河本さんはチームスローガンを「勝ってなんぼやろ」と決めました。「勝つことによってチームは前に進む。大阪弁の方が鼓舞しやすい」と考えたからでした。

河本さんが主将として初めて迎えた2010年2部秋季リーグで愛知東邦大は5勝0敗で優勝。入替戦でも藤田保健衛生大を8―0で下し1部リーグ昇格を決めました。そして最初の1部リーグ戦となった2011年春季リーグも5勝1敗で優勝。2位の名城大学とともに第34回全日本学生軟式野球選手権大会(下関球場)に初出場し、堂々の優勝を決めました。

1回戦で岡山商科大学に3―0で勝利。準決勝、決勝に進んだ大会結果は2011年8月26日「中日スポーツ」にも掲載されました。

<第34回全日本学生軟式野球選手権大会が25日、山口県下関市の下関球場で行われ、中部地区代表の愛知東邦大が準決勝で福岡国際大に2−0で勝ち、引き続き行われた決勝戦では広島工業大に4−0で快勝。優勝を決めた。大会は全国8地区の代表12校が出場。愛知東邦大は3試合とも無失点で勝利を収めた>

表彰式では3年生の河本さんに最高殊勲選手賞、4年生の粥川信太朗さんに最優秀投手賞が贈られました。

カフェテリアで大学主催の祝勝会

A棟カフェテリアで行われた祝勝会。右端が河本さん(2011年10月26日)

河本さんは全日本学生軟式野球連盟の選考で、2011年10月5日から11日まで北京で開催された第16回日中友好学生軟式野球大会に日本チームキャプテンとして参加しました。

「東邦キャンパス」114号(2012年1月1日)に掲載された河本さんの大会報告です。

<日の丸を背負って戦うことや、日本代表のキャプテンを務めることに対して不安や緊張は全くありませんでした。それは愛知東邦大学軟式野球部でキャプテンを務め、夏に行われた全日本学生軟式野球選手権大会で優勝し、全国制覇を成し遂げたという自信が心のどこかにあったからかも知れません。〝負けたらあかん〟〝ミスしたらあかん〟。そんなネガティブな考えを一切持たず、野球が出来る〝幸せ〟を感じながら、今、この一瞬を〝楽しむ〟ことだけを考えて大会に臨みました。愛知東邦大学で軟式野球をしていて本当によかったです。ありがとうございました>

河本さんが中国から帰国後の10月26日、A棟カフェテリアでは、大学主催による軟式野球部の日本一を祝う祝勝会が開かれ、成田良一学長、榊直樹理事長が部員たちの快挙を祝福しました。

これより先の9月、「東邦キャンパス」は軟式野球部全国優勝と、全国高校ダンスドリル選手権ヒップホップ部門2位となった東邦高校ダンス部の活躍をたたえ、「大学・高校祝勝特別号」(113号)を発行しました。軟式野球部については、大会成績、26人の顔写真入りチーム紹介、成田学長のお祝いメッセージと主将・河本さんの優勝報告が掲載されました。

 

自主的自発活動は大学クラブ活動の神髄  学長 成田良一

「軟式野球部諸君、大会出場おめでとう。限られた練習環境の中で大きな成果を出したことに、喜びと、諸君への尊敬の念を感じます。これも君たちの厳しさと自由さを兼ね備えた日頃の努力の賜でしょう。この大会で、君たち一人ひとりが持っている力を思う存分発揮してきてください」――こう言って送り出したところ、初出場にして優勝という快挙を聞き、心から喜びを感じました。自主的自発的な活動を積み重ねて優勝に結びついたところに大学におけるクラブ活動の神髄があると思います。最後に、夜間の練習にグラウンドを貸していただいた東邦高校に感謝します。

間違っていなかった「勝ってなんぼやろ」野球  主将 河本拓也

私たち愛知東邦大学軟式野球部は第34回全日本学生軟式野球選手権大会において悲願の全国制覇を成し遂げ、日本一になりました。「勝ってなんぼやろ」を合言葉に過ごしてきた日々が間違っていなかったことを証明できたことをとても嬉しく思います。これからは追われる立場になりました。好成績を維持できるよう、常に挑戦者の気持ちを忘れず、夏秋連覇に向けて再スタートします。今後とも応援よろしくお願いします。

 

「最高の仲間とでっかい花火打ち上げたったで!」

第33回東日本大会優勝で胴上げされる河本さんとスコアボード

軟式野球部は2011年秋季リーグ戦も優勝。東京都八王子市の上柚木(かみゆぎ)公園野球場で開催された第32回東日本学生軟式野球選抜大会に出場しましたが、残念ながら1回戦で中央大学に0―1で敗退しました。

しかし2012年も快進撃は続きました。春季、秋季リーグで優勝。夏の下関球場での第35回全日本学生軟式野球選手権大会では準決勝でやはり中央大学に2-6で敗れましたが、11月に上柚木公園野球場で開催された第33回東日本学生軟式野球選抜大会では準決勝で中央大学を4―0で退けて決勝に進出。強力打線を誇る神奈川大学を2―0で下し、堂々優勝を決めました。2年越しの全国舞台〝夏秋制覇〟となりました。

試合終了後の上柚木公園野球場スコアボードには「優勝 愛知東邦大学 最高の仲間とでっかい花火打ち上げたったで!」の電光文字が輝きました。「4年生という就職活動でそれぞれが忙しくなる中、誰一人退部することなく、最後まで自分を信じてついてきてくれた最高の仲間たちと有終の美で終われたことが本当にうれしかった。その仲間たちへの恩返しの意味も込めて、大会本部に書き込んでいただきました」。河本さんは楽しそうに振り返りました。

「東邦キャンパス」116号(2013年1月7日)で顧問の村松芳紀さん(現経理課職員)が東日本大会優勝を祝福しています。

<今回の優勝では宿敵中央大学にも勝利し、なおかつ優勝できたことで、学生たちからはとびきりの笑顔と喜びがあふれました。今回の大会に向けてチームは、キャプテンの河本君を中心に全て学生たちで運営し活動してきました。その中で培われた自主性とチームワークが今回の大会で存分に発揮できたと感じています。学生たちには素晴らしい経験となりました。今後も引き続き学生主体の、自由な軟式野球部を続けていきたいと考えています>

 

交流続く軟式野球部の仲間たち

第34回全日本学生軟式野球選手権大会優勝メンバー

河本さんは2013年3月に卒業しましたが、軟式野球部の仲間たちとは卒業後も交流は続いています。新型コロナ感染が拡大する前の2020年1月にも名古屋駅前で旧交を温めましたが、北海道から駆け付けた仲間もいました。「東邦キャンパス」113号に掲載された優勝チームメンバー26人です。

部長 山本正彦(人間学部教授)、顧問 村松芳紀(大学職員)

選手 ▽河本拓也(人間3年)捕手・秀岳館▽粥川信太朗(経営4年)投手・明徳義塾▽ポージン・ルーク(人間1年)投手・南山国際▽本田竜也(人間4年)投手・北海▽伊藤隆介(人間4年)投手・犬山▽田村拓摩(人間2年)投手・高知農業▽龍田洋平(経営4年)内野手・和歌山商業▽佐野稔晃(経営4年)内野手・静清工業▽南詩音(人間2年)内野手・金沢▽竹田幸泉(経営2年)内野手・浜北西▽榊原広志(人間2年)内野手・岡崎東▽中村賢太(経営4年)内野手・三重▽大城雄太(人間3年)内野手・宜野座▽阿部裕也(経営1年)内野手・新潟青陵▽山岡恒允(人間4年)外野手・浜北西▽後藤純季(人間4年)外野手・横浜▽野中貴弘(人間3年)外野手・清水西▽大堀聖也(経営1年)外野手・日本航空▽川口直斗(経営2年)外野手・栄徳▽上村勝太(経営4年)外野手・金沢学院東▽市川和志(経営1年)外野手・岡崎東▽樋口右季(人間4年)外野手・稲生 ▽皆川夏美(人間2年)マネージャー・西菱▽清水美咲(経営1年)マネージャー・いなべ総合学園

 

愛知県教員採用試験で現役合格第1号に

河本さんは2013度の愛知県公立学校教員採用選考試験(高等学校保健体育科)に合格し、5年間、県立西春高校で保健体育の教員を務めました。2018年3月に退職。同年4月からは、新たに受験した2018年度の大阪府公立学校教員採用試験(同)に合格していたため、府立寝屋川高校高校(定時制課程)で教壇に立っています。

愛知県教員採用試験に現役で合格したのは愛知東邦大学では河本さんが第1号です。採用試験が行われたのは4年生の7月でしたが、河本さんは当時S棟に教務課が設けてくれた学習室で試験対策に打ち込みました。教務課職員だった松井慶太さん(現在は入試広報課)は、「軟式野球部での活躍も選考上大きなプラス要因にはなったと思いますが、合否の決め手は何といっても筆記試験。当時は教務課もS棟にあったのでよく見ていましたが、河本君は学習室をフルに活用し試験勉強に集中していました」と振り返ります。

採用試験合格を知った時、河本さんは真っ先に教務課に飛び込み、松井さんに報告。松井さんからの連絡で榊理事長、成田学長も駆けつけて祝福してくれたそうです。

河本さんは、「友人たちに叱咤激励され、高いモチベーションで試験勉強に取り組めました。軟式野球での実績も評価していただいたとしたら、チーム一丸となっての実績なので、仲間たちのおかげということになります」とも言います。

高校教員となってからの河本さんは、野球との関わりを、「伝えていくこと」にシフトしています。西春高校では硬式野球部顧問として、それまで尾張地区大会止まりだったチームを県大会出場常連校に育てあげました。

寝屋川高校でも軟式野球部顧問ですが、定時制ということもあって部員は3人だけ。「キャッチボールの相手をする程度だけですよ」と苦笑しますが、生徒からのボールをしっかりと受け止めながら、励ましのエールが込められたボールが投げ返されているに違いありません。

2011年3月に卒業した初代キャプテンの風間さんも講師を続けながら京都府の教員採用試験に挑戦を続け、2016年度試験で合格し、現在は中学校での教員生活を送っています。風間さんも軟式野球部時代を振り返り、「協力し合いながら、多くを自分たちで解決しなければならなかった軟式野球部時代があるからこそ、教員としての今があると思っています」と懐かしそうでした。

法人広報企画課・中村康生

 

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