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TOHO
INTERVIEW

2022.08.30

第83回 会計学のトレンドを追求し続けたい

経営学部長補佐・地域ビジネス学科長

深谷 和広 教授

深谷和広(ふかや・かずひろ)

大阪府豊中市出身。立命館大学大学院経営学研究科企業経営専攻博士後期課程単位取得満期退学。経済学修士(大阪経済大学)。1994年東邦学園短期大学商経科助教授、2002年東邦学園大学経営学部地域ビジネス学科助教授。、2011年愛知東邦大学経営学部地域ビジネス学科教授、2021年から現職。2011年から硬式野球部部長。

――会計学が専門ですが簿記との違いは。
 簿記と会計はもともと密接に関係しています。簿記は帳簿を記録するルールのことで、簿記を基礎として行うのが会計というイメージです。歴史的には、簿記であらゆる取り引きを記録してきましたが、途中から簿記を使って「計」算を「会」わせるという意味の「会計」制度が発展してきて、その仕組みや制度を研究する会計学という学問分野が成立しました。
 会計には二つのジャンルがあります。ひとつは社会に向けて計算の内容を発信していく「財務会計」。もうひとつは企業を管理運営するために計算して数値を管理する「管理会計」です。財務会計は外向けの会計、管理会計は内向けの会計といえます。

――授業では主に財務会計を扱っていますね。
 株式や債券を発行して集めた資金をどう運用しているか、企業の実態を出資者や債権者に発信していく役割を財務会計は担っています。もちろん原価計算など管理会計も重要ですが、授業では財務会計の仕組み・制度・考え方を勉強しています。

―――大学で会計学を学ぶ意義は。
 財務会計制度を理解し、知識を身に着けることで、世の中の仕組みに関心を持つようになることが一番でしょう。そのためにも大企業が発信している財務諸表を実際に読みながら、理論と実務とを繋げて考えていく授業をしています。前年比の増減は何%だとか、売り上げのなかで利益が占める割合だとか、理論とともに実際の数字を読んでいくことで会計のセンスを磨き、社会人になっても自分で学んでいく基礎を作るというところに大学で会計学を学ぶ役割があると考えています。

――学生が会計に親しめるよう工夫している。
 会計では金額など大きな数字を使いますが、学生は社会経験が少ないので大きな金額に慣れていません。ですから学生には「就職したら年収いくら貰えると思う?300万円くらいだよ」などと身近な数字を話題にして金銭感覚を掴んでもらえるよう努めています。財務諸表の読み方や減価償却など理論は大切ですが、実際の数字に慣れることも大切です。会計の発想法さえ身に着ければ、どんな場合にも応用できます。授業では課題の切り口は異なっても、学生に会計センスを身に着けてもらいたい、そしていつか芽吹いてもらいたいと考えて行っています。

――研究テーマは英米日の企業会計制度と聞きました。
 1970年代当時のイギリスを中心としたインフレーション会計を研究したのが始まりでした。常に新しい情報を発信し、国際的な会計基準のリーダーシップも取っているイギリスを中心に、アメリカと日本を守備範囲にして比較研究を続けてきました。
 2000年代以降は国際会計基準が影響力を持つようになってきました。国際会計基準というのは、従来各国バラバラに作っていた会計基準を、経済グローバル化の大きな流れを受けて国際的に基準の統一を目指して作られた会計基準です。現在ではEUの多くの企業はもちろんのこと、日本の大手企業250社以上が採用することになりました。国際会計基準の考え方が重視されるようになってきたというところでその動きを追いかけています。

――国際会計基準と各国の会計基準の関係性に関心が移ってきた。
 各国は国際会計基準を意識しながら、自国の事情に合わない部分は変えて、それ以外はできるだけ国際会計基準に沿った会計基準にするという状況になっています。もちろん、国際会計基準はそうした各国の会計基準の影響を受けつつ更新されていきます。そこのダイナミックが面白いのです。国際会計基準と各国の会計基準とのいわばせめぎ合いを研究しているといっていいかもしれません。

――会計学を研究しようと志したきっかけは。
 社会人になって役に立つかな、くらいの軽い気持ちで進んだ立命館大学経営学部で簿記に出会い、また会計に興味を抱きました。卒業後は高校の教師をしながらも、もっと新しいことを勉強したい、新しい会計を研究したいという思いが募り、大学院に通いました。基本的に新しもの好きなんです(笑)。

――学生たちに卒業までにこれだけは身に着けてほしいことは。
 自分で勉強する基礎を築いてほしい。自分で興味を持って自分で調べたことだけが自分の身になると思います。何をやっていくかは自分で決めればいいけど、やっていく土台を大学で作ってほしい。土台とは調べる力。知識を広げるために本を読んだり、資料を集めたりして考えることで自分のものにすることを大切にしてほしい。本も時間をかけて考えながら読むこと。一度読むだけでは理解できないはずです。根気よく読む癖をつける、読解に必要な知識を持つ人に尋ねる。コミュニケーション能力も含めた社会人の基礎作りです。

――趣味は何ですか。
 読書と映画です。最近は哲学関係の本に手を伸ばしてます。発想法を知ろうと思って。正直言ってよく理解できないところもありますが、いつか哲学者本人の言っていることが読み砕けるようになればと挑戦中です。映画はSFものを劇場でよく見ました。「スターウォーズ」とか「未知との遭遇」とか。最近では「デューン砂の惑星」をテレビで観ました。若い頃には意味がわからなかった部分が少し理解できた気がしました。年齢を重ねたということでしょうね。

――今後注目したい会計学のテーマは。
 新しい国際会計基準のテーマとして「非財務情報」が話題になっています。これまでは会計基準の対象は財務情報、つまり財務諸表の数字だけでした。ところが、気候変動などリスク管理はされているか、女性が管理職として活躍しているか、ダイバーシティに積極的か、またSDGsへの関与など、これらの企業の取り組みによって企業価値が高まる世の中に変化し、国際会計基準にも取り込んで基準化しようと具体的に動きだしています。財務諸表が中心だった会計基準に非財務情報がどのように関係していくのか、注目せざるを得ません。新しいトレンドに注目してその意味するところを検討する、それが私の研究スタイルです。

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