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TOHO
INTERVIEW

2023.05.29

第93回 スポーツツーリズム研究をライフワークに

経営学部地域ビジネス学科

杉谷 正次 教授

学長補佐

杉谷 正次(すぎたに・まさつぐ)
島根県益田市出身。1985年愛知学院大学大学文学研究科博士前期課程修了。1992年東邦学園短期大学経営情報科専任講師、2001年東邦学園大学経営学部助教授、2007年愛知東邦大学経営学部准教授、2013年教授。2021年4月から学長補佐。趣味は野球やサッカーなどのスポーツ観戦、旅行。最近は知多や蒲郡など近隣の名所散策で休日を過ごしています。

杉谷教授は、スポーツツーリズムという言葉が使われはじめた初期から注目して研究を続けています。最近では研究活動に加え自治体のスポーツによる地域活性化にも貢献しています。今回のインタビューでは、スポーツツーリズムとは何か、興味をもったきっかけや今後の展望について聞きました。

――スポーツツーリズムとは。
 プロ野球の観戦、市民マラソンへの参加、オリンピックの運営ボランティアとしての参加など、スポーツを目的に旅行することがあります。スポーツツーリズムは、こうしたスポーツとの関わりを観光資源と捉えて、スポーツをキーワードに国内観光の振興や訪日外国人の増加につなげようというものです。

――スポーツツーリズムが注目されるようになったのは。
 21世紀に入り、これまで日本経済を牽引してきた「ものづくり産業」は頭打ちとなりました。そこで、新たなリーディング産業の一つとして「観光産業」が注目されるようになったのです。2008年には「観光立国」を目指して「観光庁」が設置されました。そして従来の物見遊山的な観光に留まらない、様々な旅行形態が議論され、スポーツと観光を融合させたスポーツツーリズムが新しいビジネスモデルとして期待されるようになったのです。

――スポーツツーリズムの研究に携わるようになったきっかけは。
 まだスポーツツーリズムという言葉がそれほど知られていなかった頃に、観光庁の担当者からスポーツツーリズムを紹介され興味を持ちました。それがきかっけとなり沖縄県が誘致している「プロ野球春季キャンプ」の調査を行いました。沖縄県は「プロ野球春季キャンプ」だけでなく、一年を通して様々なスポーツツーリズムのプログラムを展開しています。例えば、「NAHAマラソン」には毎年国内外を問わず2~3万人が参加しています。

――北海道ニセコ地域の調査もしていますね。
 「北海道ニセコ地域では、毎年2、3月にオーストラリア人が多数訪れている」という報道がきっかけで調査を行いました。ニセコを訪れるオーストラリア人の一番の目的は、ウインタースポーツです。ニセコ地域の雪は良質なパウダースノーであったため、「スキーやスノーボードに最適」と、口コミで評判が広がりました。オーストラリアは南半球に位置しているので日本と夏冬が逆です。そのためちょうど夏季バケーション中のオーストラリア人のライフスタイルに合致したのでしょう。今ではラフティングやカヌーといったアウトドアスポーツなどを目的に、四季を問わず多くの外国人がニセコ地域を訪れるまでになりました。ニセコ地域の街角の写真を見ると、横文字の看板が溢れ欧米のリゾート地と見紛うばかりです。

――スポーツツーリズムが地域の活性化に貢献している。
 スポーツツーリズムで満足した人たちのリピート率は非常に高いです。沖縄県では閑散期に修学旅行を呼び込んだり、いろいろなスポーツイベントを企画するなどして一年中人が集まる工夫をしています。その結果訪問客で賑わい、お金も落としてくれるので地域も潤います。まさにスポーツツーリズムの成功例といえます。

――スポーツツーリズム、いいことばかりですね。
 スポーツツーリズムが成功して経済的には潤っても、実際に生活している地元住民にとっては必ずしもいいことばかりではありません。土地の買い占めやインフラを地元住民が十分利用できないなどの弊害が生じているのも事実ですし、案内表示の多言語化や外国人向けの医療体制などまだまだ遅れています。調査研究では実際に現地に赴いて様々な人々から話を聞き、問題点を明らかにしていくことも大切です。

――今後のスポーツツーリズム研究の展望は。
 サッカーワールドカップやオリンピックのようなイベント型のスポーツツーリズムは、大きな経済効果が期待できますが、それらの効果は一元的なものです。このようなイベントは毎年行われるものではありません。したがって、今後は持続可能なスポーツツーリズムの実現に向けたビジネスモデルの開発が必要不可欠であると考えています。これまでスポーツツーリズムを積極的に展開してきた自治体はもちろんのこと、今後スポーツツーリズムを取り入れたいと考えている自治体へのサポートなど、このテーマでの研究をライフワークにしたいと考えています。

――実際に愛知県西尾市のサポートを始めている。
 2022年度は、「西尾市スポーツまちづくりビジョン2040」策定委員会の委員長を務めました。西尾市は、2011年の市町村合併で周辺の3町を合併したため、体育館やグラウンドなどスポーツ施設が重複しています。そのため施設数や施設管理の適正化などの提言を担いました。西尾市には吉良や幡豆といった温泉地もあるので、スポーツ合宿の誘致といったスポーツツーリズムを推進できないかと考えています。
 
――そもそも研究者になったきっかけは。
 はじめから研究者を目指したわけではなく、大学院修了後事務職として東邦学園に就職しました。学生時代からマイコンいじりが趣味だったので、その経験を生かしてそれまで手作業だった入試業務を電算化したり、図書館の蔵書のデータベース化したり、大学事務の情報処理化の仕事をしました。そのうち当時の東邦学園短期大学で情報処理の授業を受け持つようになり、短大教員に転向したのが研究者になったきっかけです。

――スポーツマネジメントやスポーツビジネスの授業も担当することになったのは。
 小学校ではサッカー、中高校時代には野球、大学ではテニスをやっていました。そこを見込まれたのか、たまたま愛知県私立短大のテニス大会の運営を任され、さらに全国大会の運営にも携わることになりました。また、息子が少年サッカークラブに入っていて、私も昔サッカー少年だったということもあり、クラブチームの責任者を20数年務めました。2001年この大学で硬式野球部が発足する時、野球経験者ということもあって野球部長になり、愛知大学野球連盟の理事にもなりました。チームや連盟の運営に携わるうちに、スポーツマネジメント、スポーツビジネスに関心をもつようになり、現在のスポーツツーリズム研究に幅を広げました。

――学生へのメッセージを。
 私の「Credo」は「教育も研究も一歩一歩着実に」です。目先のことにとらわれずに地道に進んでいってほしい。最近の学生に将来何がしたいか聞いても、「別に……」「特には……」といったこたえが返ってくることが多い。一つのことに深く関心を寄せたり、目標を見つけられない学生が多いように思います。時間はあるはずなのでいろんなことにチャレンジし、興味・関心を持てるものを積極的に見つけてください。

タビックスタジアム名護グラウンド

タビックスタジアム名護外観

北海道ニセコ ひらふ十字街

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