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TOHO
INTERVIEW

2023.11.21

第99回 道徳授業の成果を評価するツールづくりを進める

人間健康学部人間健康学科 

丹下 悠史 助教

丹下 悠史(たんげ・ゆうし)
愛知県瀬戸市出身。同県立明和高校、名古屋大学教育学部卒業。同大学大学院教育発達科学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。2017年から現職。

丹下助教は、子どもたちの発言や記述から、道徳の授業の成果を「見える化」する方法を研究しています。道徳授業を研究対象にしたきっかけ、学生へのメッセージなどを聞きました。真面目な印象からは意外(?)な趣味への思いも語ってくれました。

――研究テーマは。
 道徳の授業での発言や文章から、子どもが授業でどのように学んでいるかを分析したり、評価したりする手法を研究しています。道徳は他の教科に比べて、子どもたちがどんな風に学んでいるのか、授業がうまくいっているのか、という判断が難しい。数値として評価することができません。ですから 学習の質と言いますか、授業の中でどんな価値のある学びが生まれているかを見えるようにする方法を研究しています。

――道徳の授業の成果を「見える化」するということですか。
 ある問題に対する子どもの発言や書いたものの背後にある、その子なりのものの捉え方、考え方、論理といったものを特徴として表そうとしています。話し合いの中で互いの考えを表現したり、「この子ってこう考えるんだな」と感じたり、それをまた自分の考えに取り入れていったり、という様子を「見える化」 することを目指しています。

――どのような方法で「見える化」するのですか。
 教育方法学には授業分析という研究手法があります。授業の特徴を、その中の諸事実にもとづき、特に学習者側に着目して表すアプローチです。その中には、学習者の発言だけでなく、分析者による発言の解釈も含めて、それを記号化して発言内容を分析したり、発言をカテゴリーに分けて、ある特徴を持った発言が授業の初めから終わりまでの全てのやりとりの中に、どのように分布しているかを示すなど、データから客観的な情報を得る手法があります。その手法を道徳の授業に応用して、授業成果を分析できるツール作りを目標にしています。

――今の道徳の授業は、ある課題に対する「正しい答え」を教えることを主眼としていないそうですね。
 5年ほど前にこれまでの「道徳の時間」は「特別の教科 道徳」という新しい位置づけになりました。この、教科になった道徳のキーフレーズが「考え、議論する道徳」です。正しいか正しくないかの結論を教え込むのではなく、問題を解決しようとする態度、取り組みを評価するようになっています。私の研究も、ある結論に至った子どもが正しく、そうでない子どもが不正解とするのではなく、問題に対して思考するプロセスを重視しています。同じ結論に至ったとしても、誰の立場にどのように立っているか、それによって不利益を被ったり、困るような人たちがいたら、どうするのかを考えることが道徳の授業においては大事なのかなと思います。

――色々な科目がある中で、特に道徳の授業を研究対象とされたのは。
 教育学部の学生の頃は、道徳教育についての原理的な研究がしたいと考えていました。自分が受けてきた学校教育はどの程度正当性があるのだろうかと。他の教科は知育・体育ということで、その子の能力を育てることは社会にとっての利益と個人にとっての利益のどちらにも応えていると思われますが、道徳を学ぶことで利他的に行為すると、時に自分を不幸にする場合もあるわけです。学校教育というのは、一人一人の子どもの幸福や、権利を増進するためにあると教わっていたので、そこに矛盾はないのか、整合的な説明ができるのかと疑問を持ち、カリキュラムや制度といった側面から道徳教育について考えたいと当初は思っていました。

――ところが大学の指導教員からの一言が転機になった。
 ある日、指導教員から「君の考えているようなことは日々の教室の中で実際に起こっている。教室の中の子どもたち同士の小さないさかいのような一つ一つのやり取り、それを丹念に見るのはどうか」ということを言われました。その先生のゼミでは学校にフィールドワークに行き、実習校の授業や自分たちが行った授業のデータを集めて分析する、教育研究実習がありました。そこで子どもたちの中で起きていることってすごく面白いなと思ったんですね。社会の縮図というと雑かもしれませんが、私たちが解決できないでいる問題と同じような構造の問題が学校でも起きている。そうした場面や瞬間を見るには道徳が一番適していると考えて、道徳教育を研究対象に選びました。

――学生に伝えたいメッセージは。
 色々なことに足を運んだり参加したりする中で、しっくりくるものとか、やりがいがあると思えるものに出会えるっていうことは結構ある、ということです。今は目標を早めに定めてそこから逆算し、合理的に色々なことを早く進めようという傾向を感じます。社会が不安定であることや、不安がベースにあるのだと思いますが。私自身は体験することで続けられそうだという実感を持ち、生き方というと大げさですけれど、専門分野や仕事を決めてきました。はじめに自分探しをして、何かなりたいものを決めて、そのために努力するよりも、色々なことに関わる中で、物事との摩擦や抵抗のような形で、自分の輪郭が見えてくる、そういう感覚があります。まずはやってみて、その中から自分を掘り出していくことが大事だと思います。

――意外な趣味があるそうですね。
 昔から漫画が滅茶苦茶好きです。小学生の頃に祖母の家に「週刊少年ジャンプ」を数冊ストックして、巻末の作者コメントまでしゃぶり尽くすように繰り返し読んでいました。漫画から生き方を学んだみたいなこともありますし、当時は意識しませんでしたが、自然と語彙が増える、文章の読解に慣れるなど、学力にも大きな影響があったのではないかと思います。真剣にジャンプを読んでいれば、小中学校で読めない漢字は無いはずです。そんなわけで骨身に染み込んでいる感じです。今でもジャンプは毎週読んでいます。「大切な事は全てジャンプから学んだ」みたいな感じですね(笑)。

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